マツモト建築芸術祭2024 ③パンタレイ・Balloon sculpture・満ち欠けの先に 四つの月・空間への反射 – 反射の空間・
旧松本市立博物館で開催中の「マツモト建築芸術祭2024」3回目の投稿です。
熊野寿哉 Hisaya Kumano
パンタレイ patna rhei
建築物があっての生け花作品。これまで室内で飾られて来た植物を半外(はんそと)の場所に。それは大地から切り離され移動して来た生命を、元の場所に還す行いかもしれない。今回お話を頂いた際一番初めに思い浮かんだ事です。一人の花人としていつまでも突き詰めたい欲望とは何か?植物自体が出生した切欠、土や太陽からの成長要素の取り入れ方法、葉からの水分の揮発のさせ方。学問では判明している事も、それ以外の分野の人間には現実味がありません。故に想像力を活力として生きる人間は、精神的な測度から対話を試みたいというのがそれです。今回の展示期間は一ヶ月と長期間です。作品は途中、苔や微生物、湿気や錆、バクテリアまで発生させ、成長と劣化、偶然と必然の変化を繰り返し、最後は腐朽していくはずです。
近い将来取り壊される今回の会場「旧松本市立博物館」と作品を重ね合わせ。万物流転の思想を孕み、行く行くは鑑賞者の記憶の中だけに残る物を展示致します。(公式サイトより)
板坂諭 Satoshi Itasaka
Balloon sculpture
人の一生は短い。風船のように。膨らんで、浮いて、萎んで、沈む。永遠の命を追い求めるように、永遠に萎まない風船を作りたいと考えた。気持ちが沈みがちなこの時代、浮遊する風船をいつまでも眺めていたい。
五月女哲平 Teppei Soutome
満ち欠けの先に
四つの月
Beyond the phases of the moon
Four moons
あらゆるものが加速度的に通り過ぎてしまう。アウトラインを失ったかたちは、たちまち曖昧になっていく。私はそれに抗って、遠点に向かう途中を記録したいと思う。引き伸ばして、切り取って、真横から描き留める。遅らせること。忘れないこと。かたちを見つけること。
米谷健+ジュリア Ken + Julia Yonetani
クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会
複数のシャンデリアによるインスタレーション。1点1点に原発保有国の国名を付け、その国の原発からつくり出される電力の総出力規模(メガワット:IAEA資料参考)をシャンデリアのサイズに比例させた。ウランガラスを用いて、ブラックライトの照射によってウラン特有の幻想的な緑色の光を発する構造とした。2011年の福島第一原発事故を受けて制作を開始、2013年に世界の原発保有国31カ国分を完成した(その後更新を続け、現在では32カ国)。作品タイトルは、1851年にロンドンで開催された第1回万国博覧会の会場として大英帝国の威信を賭けて建造された全面ガラス張りの巨大建造物「クリスタルパレス(水晶宮)」にちなむ。(公式サイトより)
カンディダ・ヘーファー Candida Höfer
Reflections on Spaces – Spaces of Reflection
空間への反射 – 反射の空間
カンディダ・ヘーファーの写真は、肖像写真が対峙する人物の内面を捉えるのと同様に文化的建築の室内空間に内在する深遠な「性格」と、それを生み出す力学を鮮明に捉える。写真に写された人々のポーズにその性格が顕著に表れるのと同じように、空間のイメージにはその役割が刻まれ、歴史や用途の痕跡が宿る。提示されたこれらの空間のイメージは、ほとんどが内省的な性質を持つ。知識への内省、精神的探求、世俗的な瞑想、そして権力の反映であると同時に、建築がいかにこれらの内省的性格の意図を形にしてきたかを感じ取ることができる。色彩、構造、細部へのこだわり、そして何より光の反射の扱い方によって、鑑賞者はカンディダ・ヘーファーが捉えたこの定義しがたい「何か」を通じて、これらの空間に思いを馳せ、その時代の歴史や建築のスタイルを発見し、左右対称の厳格な秩序の中の細部に迷い込む可能性がある。一方で、人物の不在は逆説的に現代に至るまでこの空間が人々によってどのように利用されてきたかを強調し、空間の持つ内省的な性格を形成してきた歴史、権力、知識、精神といった様々な力学的バランスを発見し、私たちがその空間そのものに対峙し、⾃分⾃⾝を投影させることを促し、空間が意図する感情を味わうこととなる。(公式サイトより)